2022/12/02 18:06

 カーペンターズの「イエスタディ・ワンス・モア」「シング」「トップ・オブ・ザ・ワールド」が流行っていたころ、私は中学生だった。70年代の半ばだ。洋楽とはこういうもので、ポップスとはこういうものだと思っていた。素敵な歌詞に美しいメロディ。すべての世代に受け入れられるエバーグリーンな輝きを持つ楽曲。

 だが、実際はそうならなかった。80年代になると、ニューウエーブが狂い咲き、奇妙な姿で歌う、変わった歌詞とメロディを持つ楽曲が世界を席巻した。仕方がない。そういう進化をたどったのだから。実のところ、私もパンク/ニューウェーブ/テクノポップが大好きだった。

 その後も、音楽の進化は続く。現在、音楽の細部化はさらに進み、老若男女が知っている楽曲など想像はできない。エバーグリーン。美しい言葉だ。カーペンターズの音楽をときたま聴くと、エバーグリーンという言葉が信じられていた時代を思い出す。憧憬のような感情とともに。

 ナウ・アンド・ゼン。


(緒 真坂)