2024/10/20 22:34

「ストーカーレポート」エラリークイーンの悲劇①、更新されました。

書き出しです。


フィッシュマンズの佐藤伸治。テクノのアンドリュー・ウェザオール。RBのアリーヤ。いかりや長介。坂本龍一。高橋幸宏。

 好きな人が、次つぎと死んでいった。そしてこれからも死んでいくだろう。

 死んでしまった人々が、私の脳裏に生々しくよみがえる。

 まるで現在も生きているように。

 私には、友だちや、知り合いがいない。だからフィクションを親友として育ってきたのだ。私は本を読むことや音楽を聴くこと、映画を観ることが好きだ。

私に足りないのはいったい何か? 

 この質問に対して明快な解答を出す映画がある。 

 その映画のワンシーンで、人間の限界に挑むため宇宙へ飛び出そうとする宇宙飛行士に、新聞記者がどうしてそんな危険なことに挑戦するのか、と質問するのだ。

 その宇宙飛行士はこうこたえる。「冒険心だ」と。冒険心。

 私にはないものだ。

 

 美しい女に惹かれる。目にした瞬間に、まぶしい思いがして真夏の青空を見たように目を細める。

 私は女が好きだ。若くても年を取っていても。

 嘘ではない。また、わざと虚勢を張っているわけでもない。しかも、私は一筋である。浮気はしない。それぞれに独特の持ち味があるからである。死に方に。

 私は独特の臭覚を持っている。私がかかわると、死人が出る。百パーセント、完璧に。

 属性。そう、そういう属性なのだ。

 私はベテランのストーカーだ。しかもプロの。どんな複雑な鍵がかかったドアであっても、私に開錠できない鍵はない。ベテランといわれるゆえんである。しかもばれて通報されたことは、かつて一度としてないのだ。

 危険な人物。私は、それを充分に自覚している。

 いままでたくさんの美しい女をストーカーしてきた。

 複雑で、理不尽な事情があり、私はプロのストーカーとして成長したのだ。


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